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  • 執筆者の写真vicisono

梶原一騎の定理(4)~空白の神

※この投稿は2006-11-09に旧サイトの日記ページにあげていた記事を再編集したものです。


肉体の成長に逆らってバンタム級にしがみつくジョーを、止めることのできなかった拳キチのおっちゃんですが、あれが星一徹や車周作、鬼利鎌だったらどうなってただろう。

実際に止めるかどうかはともかく、有無を言わさぬ怒涛の男語り(笑)で、止めることは可能だったような。

やっぱり、段平って、父権キャラじゃないよね。



以前、よそ様のサイトで梶原作品の基本構造を語りまくってしまったことがあるのですが、



A: 孤高の強者たる男

B: Aを愛する高貴不屈の女

C: Aを憎み憧れ挑み続ける男



…というのが、梶原ドラマの人間関係のベースだと思います。



『タイガー・マスク』の場合は、健太少年の憧れのヒーローである、「強く正しい不屈の男・タイガーマスク」と、「死にたくない、いっそ逃げ出したい」と思いつつも、子供たちが見ている手前雄雄しく戦わざるをえない、「中の人・伊達直人」のせめぎ合いのドラマですね。


辻先生の談話を読むと、原作の最終回では数パターン検討された案の全てが「直人死亡」ネタで、「中の人」を殺すことで「タイガー・マスク」という幻を永遠に生かす、というのは絶対の決定事項だったようです。



先日復刊された梶原先生の長編デビュー作『チャンピオン太』は、『タイガー・マスク』と『巨人の星』の原型のような内容です。


主人公・大東太には、経営難に苦しむ孤児院を健気にささえる「るり子」というガールフレンドがおり、師・力道山が暴力団事務所に乗り込んで借金返済の話をつける…というエピソードがあります。「師」を持たない伊達直人は、暴力団事務所に自ら乗り込んでカタをつけていましたが。

ギャングに脅されて不正を強いられ苦悩するが、孤児院の院長の「子供たちに範を示してほしい」という懇願を受けて、フェアに戦う…という孤児院出身レスラーも対戦相手に登場します。


「目標とすべき師」が存在する『チャンピオン太』は、ネタ自体は『タイガー』と共通していても、あくまで正統的なビルドゥングス・ロマンです(太は世界チャンピオンになって、「るり子」と婚約して終わる)。



『あしたのジョー』をこの「梶原一騎の定理」に当てはめた場合、

A: 力石徹

B: 白木葉子

C: 矢吹丈


かとも思ったのですが、実は

A: 空白(もしくは、「神」)

B: 白木葉子

C: 矢吹丈&力石徹&カーロス・リベラ


かなと。  



不在のA(父/神/師/社会)との決着をつけるために、世界チャンピオン・ホセにA(=倒すべき「父」)を「受肉」させたのが最終シリーズの構成なんじゃないかと。だからそれまでの展開からすると、ちょっと唐突な感じを受けるんじゃないだろうか。



ところで、不在の父、きつい母、少年院入りするような不良の三兄弟って、梶原先生の家庭環境そのものだよなぁ。…と、この間東映チャンネルでやってた『すてごろ~梶原兄弟激動昭和史』を観てしみじみ思いました。


 

オマケ。

上記定理を『巨人の星』に当てはめた場合、

A: 星一徹

B: 星明子

C: 星飛雄馬&伴宙太&花形満


…でしょうか(左門は明子との縁がないし、伴や花形のように「父に逆らってプロ野球入り」イベントがないので、一応外した)。

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