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  • 執筆者の写真vicisono

偽書Banquet解題 Part1~絵羽の碑文解読まで

このページにはビジュアルノヴェル『うみねこのなく頃に』『うみねこのなく頃に散』のネタバレが記載されています


2013年07月27日 (初稿)

2019年09月18日 (サイト移転)


 

ローカル・ルール



推理の前提として、十三人の生贄とイレギュラーな死者で書いた通りに「魔女の復活の為には、魔女がみずからの手で13の魂をイケニエに捧げる必要がある」という仮説を適用する。


また、EP6で駒達の語った「右代宮ルール」も適用する。


  • ゲーム盤内「右代宮ルール」

  • 全員夫婦仲は円満。妻殺しはありえない

  • 兄弟で殺しあう可能性はあるが、その妻を殺すことはありえない

  • 兄が妹を殺す可能性は否定しないが、ナツヒやキリエ、バトラやマリアを殺す理由はない(理由さえあれば殺す?)

  • ローザとマリアを同時に殺害するには複数犯でなければならない

  • ローザは相手が銃で脅したとしても、怯むようなヤツじゃねぇ

  • 我が子の目の前で殺人は犯さない



 

親族共犯者



第一の晩の連鎖密室のメイントリックについてはいわずもがななので割愛するが、特筆しておくべきは、他のエピソード内のカノンは語り手が挿入した完全幻想と解釈できても、EP3第一の晩に関しては「カノンという使用人が身体的に存在する」と親戚一堂が認識していなければ成り立たない点である。


それはさておき、今回のメイン親族共犯者である。


4日夜に「魔女のメッセージ」が読み上げられた後、親族達が金蔵の真意を確かめる為に書斎に向かった際には、クラウスは弟妹に「金蔵は面会を拒んでいるが、手紙の真偽については肯定も否定もしない」と伝えている。


翌朝、館内で異変が発覚後、書斎に確認に行ったクラウスは、弟達に「書斎に人の気配がない」と金蔵不在を証言。

この段階でクラウス夫妻は「昨夜の夕食時には書斎で生存していた金蔵が、今朝の時点で殺害されている」前提で行動している。更にこの後、ゲストハウスでの篭城を主張し、銃を持ち出している。


今回の親族共犯者はクラウス夫妻であろうが、第一の晩の殺人を狂言と信じていたのか、本物の大量殺人と承知していたのか。



ローザ母娘の遺体が発見されるまで、エヴァ、ローザ、キリエ、ジョージ、ジェシカが「第一の晩の殺人は金蔵の仕組んだ狂言」と認識していた事がうかがわれる発言をしている。ヒデヨシとルドルフも同じだろう。


第一の晩の遺体の確認者はルドルフ、クラウス、ナツヒ、エヴァ、ヒデヨシ、南條だが、エヴァ夫妻とルドルフは殺人現場に入ったものの、遺体が本物かどうかを確認できるほど近くで見てはいない事になる。

カノシャノのトリック成立の為だけでなく、狂言殺人の可能性を残して篭城からの誘い出しをやり易くする為という理由から、犯人の指示を受けた南條とクラウス夫妻によってエヴァ夫妻とルドルフは遺体への接近を阻まれたのだろう。つまりは、クラウス夫妻は現実の大量殺人が起こっていると認識していた。



 

楼座と霧江と…


談合その1


第一の晩の異変の後、ルドルフ含めた他の親族達が本館内を探索する一方、キリエ・ローザ・ヒデヨシはゲストハウスに子供達の安否と使用人の所在を確認しに行く。

ここまでは自然だが(ナツヒが同行しなかったのは多少不自然か)、安否を確かめた後、幼い子のいるローザはともかく、キリエがわざわざ留守番を主張しヒデヨシ・南條と共に館に戻らずゲストハウスに残留したのが引っかかる。

邪魔の入らない処でローザと話し合いたい事があったのではなかろうか。


前夜の封書開封騒ぎの際、4兄妹とヒデヨシ、ナツヒは金蔵の書斎へ向かい、子供たちと南條、キリエは食堂に残留し、その場でキリエは手紙を渡した人間についてマリアに詳しく訊ねている。

更に子供達が場を離れた後、ローザが20年近く前に森の魔女を「殺した」事を告白している。

この時点でローザと話す事は、この件の確認であろう。



キリエの思考としては


  • 金蔵の愛人と思われる金髪の魔女は20年近く前に確実に死亡しており、仮にその子供がいたとしても、それは20代前半の人物である(そのような人物の存在は今まで噂にも上った事はない)


  • 魔女ベアトリーチェを持ち出して当主継承に関して揺さぶりを掛けるのは金蔵のクラウスに対する不満の表れであり、かつての自分の決定を覆し有能なエヴァとジョージの母子に継承させる口実として「碑文の暗号解読」を利用したのでは


  • マリアの前に現れた「魔女」は金蔵の命令でドレスを着たシャノンであろう(他に該当者はいない)


その後、


  • ルドルフが最初に客間で見たシャノンの遺体はやけに綺麗だった。クラウスと南條に阻まれて『金蔵』以外の死体は間近で見ていない


  • 速やかにゲストハウス篭城が決まった事といい、南條の様子と言い、あの『殺人事件』は金蔵の仕組んだ狂言だろう。シャノンは生存し、金蔵の命令で『魔女』を装って行動している


  • 上記一連から判断して、恐らくクラウスも狂言について承知しており、使い込みの件で金蔵に首根っこを押さえられているのだろう


  • 碑文の文言や魔女の第一のメッセージだけではあいまいだったが、第二のメッセージには「隠された黄金を見つけたものには家督を与える」とある以上、「碑文の謎を解けば(物理的に実在するどうかはわからないが)黄金の在り処が明らかになり、家督が与えられる」可能性は高い


  • クラウスを飛び越した当主継承の正当性を保証できるのは金蔵だけなのだから、金蔵は確実に生きている。あの死体は替え玉である


現実的な思考をするキリエならば、「金蔵がエヴァ母子への当主権委譲を望んでいるなら、彼等以外が碑文の謎を解いてしまわないように暗号は『解けないように』作られているはず」「だから真面目に考えても無駄」とも判断していそうだが…。



 

談合その2



エヴァが解読に成功したのと一歩遅れてローザも解読していた、という描写だが、実際はキリエから「エヴァは何らかの形で金蔵から正解を与えられているはず」と入れ知恵されて挙動に目を光らせ、背後をつけていただけかも知れない。


ローザの遺体がゲストハウスに運び込まれた後、ルドルフが「無用心だ」と涙をこぼしながら何度も亡骸に語りかける描写があるのだが…それまで積み重ねられてきたこの兄妹の関係性からすると、これは非常に違和感がある。ルドルフは特にローザを愛してはいなかったはずだ。

となると、単に妹の死を悼んでいるのではなく、この特殊状況下限定でローザの「無用心な行動」に対し慙愧の念を感じていると解釈すべきだろう。


そして後の幻想場面でルドルフは「エヴァが黄金の魔女になった(=金塊を発見した)」「ローザの殺害現場を見た時、すぐにエヴァの仕業と思った」という旨の発言をしている。

つまり、ルドルフはエヴァの金塊発見を知っており、事前にローザに対し「エヴァに用心しろ」と警告したが、その警告が無駄になったという事だ。



エヴァ一人称:10時頃にエヴァが単独で解読に成功、仕掛けを作動させ、地下通路に辿り着く

エヴァ一人称:金塊と地下貴賓室の描写

三人称:立ち去りかけたエヴァ、一歩遅れて謎を解いたローザと鉢合わせ

三人称:薔薇庭園でエヴァとローザ談合。明日の朝まで黄金発見の公表を保留にする

三人称:10時半にローザがゲストハウス1階に戻る。

少ししてエヴァとヒデヨシが自室から戻る(この間に黄金について夫婦で相談か)

ローザとけん制しあった後、エヴァ夫妻は1階客室に戻る。



これから然程間をおかず、マリアが薔薇を見たいと騒ぎ出すので、エヴァ夫妻退出後にローザとルドルフ夫妻がクラウスに聞かれないように込み入った相談をする時間はほとんどない。


エヴァの金塊発見の顛末をルドルフ夫妻に報告するタイミングは、一足先にゲストハウス1階に戻った時しかない。クラウス夫妻に聞かれぬようにキリエかルドルフだけを別室に呼んで話したのか、部屋に入るなりクラウス夫妻の前で堂々と話したのかは不明だが、エヴァと黄金発見の公表を保留にする約束をした舌の根も乾かぬうちに即効でバラしている事になる…エヴァ夫妻が黄金発見について話し合っていた頃、ローザ達もその対策について話し合っていたのだ。



 

確執のバリエーション



第一の晩の七姉妹や、キリエ相手のレヴィアタンの語りに「エヴァとクラウスの確執」「ローザのエヴァへの憎しみ」が暗示されており、今回は特に「妹の兄姉に対する憎しみ」がミステリサイドの核になっていると思われる。

ローザはクラウスもルドルフも嫌いだが、それにも増してエヴァを憎んでいる。レヴィアタンの「姉達に愚鈍と虐められた、一人でもいいから味方が欲しかった」という幻想場面のセリフは、実際はローザがキリエに語った愚痴かもしれない。


「メイン親族共犯者はクラウス」「エヴァ夫妻の知らないうちにクラウス・ルドルフ・ローザが結託していた」が真相ならば、EP4と同じ前提という事になるが、 この事に積極的な意味はあるのだろうか。

「贋作」設定のEP5は「クラウス夫妻以外の弟妹が全員結託」で、裏表のシナリオになる。


EP3: ルドルフ・ローザ組は兄と姉の間で日和見しているうちに殺害

EP4: ルドルフ・ローザ組はエヴァとの事前の談合を裏切ってクラウスに付く

EP5: 弟妹一家が団結してクラウス一家を追い込む


…なら、綺麗にバリエーションが揃うが。


クラウスとエヴァの反目。そして結託したルドルフとローザがそのどちらにつくかで事態が変転するのが偽書における人間関係の基本らしい。



 

絵羽の碑文解読



書庫での暗号解読~通路探索、黄金発見まではエヴァの一人称で描写されている。

本シリーズでは「『探偵』以外のキャラの一人称描写は、事件当日のものではないか、あるいは虚偽幻想のどちらかである」パターンがほとんど。エヴァの解読ははたして事実なのか。


最終的にエヴァが生還しているシナリオなので、これは盤内における事実と見るべきだろう。


また、エヴァの碑文解読は奇跡の魔女ベルンカステルから「偶然の結果で『奇跡』ではない」と評され、一方EP5バトラの(正解を教えられた八百長による)黄金発見は幻想の金蔵から「真の奇跡」と評される対比が「ベアトリーチェのゲームの意味」を読み解く鍵の役割を果たしている事から、やはりこのエピソード内のエヴァは「自力で碑文を解読し、黄金を発見した」と思われる。



幻想エヴァは黄金の魔女継承式において当主の指輪を贈られたが、盤内現実においては尚も真当主が保持している。

どうやらゲーム内では『指輪の委譲』が碑文解読ゲームのゴールあつかいのようなので、この時点での駒絵羽はゲームを完遂していない扱いになる。

ただし、最終的に「勝者」として生還するシナリオなので、ゲーム内の何処かの時点で真当主に黄金発見報告をし、指輪を贈られているはずなのだ(後述)。

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