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  • 執筆者の写真vicisono

贋作End解題 Part2~招かれざる名探偵


このページにはビジュアルノヴェル『うみねこのなく頃に』『うみねこのなく頃に散』のネタバレが記載されています



2013年09月02日 (初稿)

2013年09月13日 (改稿)

2019年09月18日 (サイト移転)


 

幻想法廷と初期シナリオ



第5のゲームはこれで閉じられ、24時を迎えての答えあわせになるわ

本EP全体の流れとしては、プレイヤーのベルンカステルがゲーム盤上の要素を恣意的に組み合わせ、GMラムダデルタが用意した事件の真相とは別解を、それが別解であると百も承知の上でゴリ押しし、ラムダもそれを面白がって受け入れた。

…というものに思われる。


では、「本来の」ゲームはどのように進行し、第四~八の晩には誰が犠牲になっていたのだろうか。


GMマスター・ラムダとしては、魔女による不可能殺人を構築し完遂するシナリオで進めていたはずであり、


  • 第一の晩、魔女のノックと5+1人殺し

  • 5+1人の死体消失

  • 密室からの金蔵失踪

  • チェーンロック密室でのヒデヨシ殺害


を展開後、アリバイのないナツヒ、所在不明のクラウスと金蔵という見かけ上の犯人候補を残した状態で更に6人分の不可能殺人が起こるはずだ。


 

考えられる要素


ヒデヨシ殺害

客間でナツヒのつるし上げをしている段階では、安置されているヒデヨシを「殺しなおす」暇はなさそうだ。

この後の展開の中でヒデヨシの「死体消失」が起こり、其処で改めて殺害されるのかもしれない。


客間での告発後、他の登場人物全員が客間でナツヒを監視している間に、ヱリカは単独で館内をくまなく探索している。

客間以外の館内にヒデヨシの死体が置かれていた場合、ヱリカに発見されてしまう。

ナツヒが客間に入った時点では、既にヒデヨシは別室に移動し其処で速やかに殺害されている…という可能性は退けても良いと思われる。


金蔵の死体

ベルンと思惑は違うが、ラムダも『金蔵生存』の建前が存在する余地を残してゲームを組み立てている。

金蔵の焼死体が登場するとしても、最後の段階になってからだろう。


再審時にバトラが証拠として「識別可能な金蔵の死体」を提出しているので、24時までの間に死体が発見され、その時点での盤内の全駒がそれを金蔵と認識もしくは主張する趣向になっている可能性は高そうだ。今回も焼死体なのだろうか?


第一の晩の6人の死体

親族達にあくまで「狂言殺人」であるという認識を保たせつつシナリオを進めるには、クラウス達の死体が発見されては困るはずだ。


客間でのつるしあげの際、一同は「クラウス死亡」前提で話を進めているが、ヱリカは赤き真実により確信し、他の親族達はあくまで狂言と信じつつヱリカに同調、ナツヒはプレッシャーに負けてクラウス死亡を受け入れただけだろう。


赤字によると、第一の晩の6人は殺害後、遺体は一切移動されていない。

ヱリカは金蔵を探して屋敷の外、敷地内をくまなく探索し、親族一同も館内を捜索したそうなので、彼等の遺体は地下貴賓室の鍵のかかった扉の向こう、九羽鳥庵側通路だろうか。隠し扉・隠し通路ルールの扱いが微妙だが…


「19年前の男」

「秋が好きである事はシャノンにしか話した事がない」というナツヒの回想は、シャノンが秋のカードを置いた犯人という証拠にはならない。どの季節かを知らなくとも、古典的な手品のトリックを用いれば正解のカードを引かせるのは可能である。


この後、ナツヒが「19年前の男による脅迫」を明かし、シャノンを犯人の一味と主張するが論破される展開も用意されていたのだろうか。

(EP2で挿入された「当年16歳のシャノンは使用人としての勤続年数が10年」という情報の繰り返しが主目的なのかもしれないが)


バトラ殺害

これはラムダによる贋作なのでバトラを最後まで生存させる必要はない。


 

駒たちの生存申告


幻想法廷における駒達の自己申告を見てみる。


ローザ:「第一の晩に殺されました」

ジェシカ:「第一の晩に死亡だぜ」

ジョージ:「第一の晩に死亡」

マリア:「死んじゃったけど、私はこうして喋ってる。ね?」

源治:「第一の晩に、死亡でございます」

クラウス:「現在は捕らわれの身で、どこかに監禁されている」


ヒデヨシ:「ついさっき殺されたばかりや」


バトラ:(生存申告なし)

ルドルフ:(生存申告なし)

郷田:(生存申告なし)

熊沢:(生存申告なし)


エヴァ:「生きてるわ」

ナツヒ:「生きております」

キリエ:「まだ生きてるわ」

南條:「私も永らえておりますな」

シャノン:「生存してます」

カノン:「同じく、生存」


金蔵:「書斎の窓より抜け、六軒島の何処かに潜んでおる」



クラウスと金蔵については、「駒置き場に片付けられた」時点の認識なので置くとして、生存申告をしている駒達はどの時点での認識を語っているのだろうか。5日24時?それともゲーム中断時の4日14時頃?


後者とすると、ヒデヨシはナツヒが客間に入った時点で既に別室で殺害されていなければならないが、親族の目を逃れ、ヱリカの探索も逃れて実現するのはきわめて困難。

前者とすると、ヒデヨシが「実際に」殺害されたのは5日の11時台という事になる。

幻想法廷においては、駒は「駒自身の認識する真実」ではない意図的な嘘もつけるルールなのかもしれないが。


一応、この生存申告を5日24時のものとして考えてみる。


 

招かれざる名探偵


秋のカードのトリックが喝破され、「バトラ=ルドルフが用意した替え玉兼『19年前の男』」の可能性が提示された上で、軟禁中のナツヒを監視していた熊沢と郷田が「当主様」に呼び出されたまま失踪。前後してバトラも姿を消す。


バトラが何らかの目的で行動しているのか、と思いきや薔薇園でバトラは射殺死体で発見される。

監視の目がなくなり、銃を事前に隠し持っていた可能性のあるナツヒが疑われる。

バトラの遺体安置時にヒデヨシの「遺体」が消えうせているのが判明。エヴァが異常な動揺を見せる(犯人はこっそり「追い詰められてヤケになったナツヒが危険なので念の為に館の外に避難させた」と説明しなだめる)。


「『バトラ=19年前の男』と思い込んだナツヒの犯行」を軸に推理を組み立てるヱリカ。

ヱリカとキリエに問い詰められつつも、バトラの出生の件にはあくまで口を噤むルドルフ。ルドルフ夫妻に対する疑心に駆られるエヴァ。

23時を迎えた頃、耐え切れずに独りになりたいと客間を出たルドルフが殺害されるが、今回はナツヒにもアリバイがある。


ヱリカが「金蔵犯人説」「熊沢・郷田共犯説」を持ち出した処でボイラー室から異臭。眉間に杭を打たれた金蔵の死体が見つかる。ヱリカは替え玉死体説で尚も強弁しようとするが、その時南條が熊沢と郷田の遺体発見を告げにやってくる。二人の遺体には腹と膝に杭が打たれていた。


更に客間のクロゼットの隙間から血が流れ出しているのが見つかり、扉を開くと胸に杭を打たれたヒデヨシの遺体が出てくる。半狂乱のエヴァはジョージの名を呼びながら館の外へ走り出て行く。何を今更といぶかしがるヱリカ。


24時を迎える前に館内をもう一度探索するヱリカ。魔女の肖像の前にさしかかった処で背後から何者かに刺される。


 

 …………た…確かに…探偵が被害者になってはいけない戒律はない……けど……シリーズ初登場エピソードで名探偵が…殺される…なん……て………86年なのに…そんな……どこぞの新本格…みたい……な………ぐふうっ


 断末魔の苦悶の中、古戸ヱリカの耳は若い男のあざけるような声をとらえた。いや、正確には若い男のようにも聞こえる声、というべきか。


「やあ、探偵サン。ご協力ありがとう。本当は、このメンバーじゃタマシイが1コ足りないんだけど…キミが一所懸命”い”るって証明してくれたし。いいよね?そうそう、キミの死体には足に杭を打たせてもらうよ。 だって、ホラ、犯人は物語当初からの登場人物じゃなきゃいけないけど、被害者が追加キャラじゃダメなんてどこにも書いてないし。探偵が見立て殺人の被害者を兼ねるってのも、割とレアケースだね。キミもいい経験になるんじゃないかなぁ?くすくすくす、あはははは、をーっほっほっほっほ!」


 古戸ヱリカには、その耳障りな笑い声も、間もなく鳴り響く24時を告げる鐘の音も、もはや届く事はなかった。



『名探偵古戸ヱリカ最後の挨拶~魔女伝説連続殺人事件』



 


ヒデヨシは実は第二の晩ではなく、第五の晩のイケニエであり、「寄り添う二人を引き裂け」はルドルフ・バトラ父子でした…という感じで。


十三人の生贄とイレギュラーな死者の考察に反してしまうのが苦しいが、贋作ルールで金蔵も勘定に入れてOKとしてみた。南條の「私も永らえておりますな」を「生き永らえて」とは言っていないから生存申告にカウントしない、というのは流石に苦しいし…


本編で描写された贋作要素として、「碑文解読が八百長」「親友のマリアを儀式の為に殺害」 があるが、儀式の過程でバトラも殺害したとすると、「ジョージ、ジェシカ、バトラを殺害しシャノン、カノン、ベアトを残しても、本物のハンニン的には意味がない」というのも加わる事になる。



 

いくつかの疑問点


尚も残る疑問点その他


※弟妹たちの談合は「年度内に金をせしめられる」という発言から86年4月~9月か。

さくたろうは85年11月~12月に「殺害」されたと思われるので、描写に矛盾がある。


この談合自体が幻想、あるいは幻想は部分的なもので談合自体はなされたのか?



※85年親族会議時点でナツヒは「薔薇庭園担当の使用人・カノン」の存在を認めている。


この描写が幻想なのか、それとも金蔵生存偽装に利用する為に「カノンという使用人」も”い”る事にされていたのか。

(金蔵を目撃する使用人がシャノンと熊沢ばかりではいささか不自然なので、庭での目撃役として利用)


EP5においては、今までと異なりシャノンよりもカノンの出番が多い(二人とも人間ドラマにはろくに絡まないが)。

これは「19年前の男」を中心にすえたEPなので「カノン(男性面)要素」を強調しているのだろうか。



※冒頭でメタバトラが「これまで金蔵に会ったと証言した者はクラウスとナツヒと使用人たちだけ」と「金蔵生存幻想」を看破しているが、どういう訳かEP2におけるローザについては触れていない。


※第一の晩の犯人として、「午前1時にローザが4人を殺害後自殺もしくは事故死」の可能性を提示していない。


※再審において、「『バトラ=19年前の男』説」の伏線としてEP2終盤でローザが口にした「『右代宮戦人』替え玉説」を挙げていない。


…バトラがローザの存在を無視するのは何故なのだろう。

最初の2つについては作者(竜騎士)の都合で片付けられるが、最後のは非常に不可解。



※「これまでのあなたは探偵デシタ!」というドラノールの赤字宣言。


この「これまで」はEP1~4?

それとも論戦が本格開始されたEP2~4?

あるいは同一原案者による偽書のEP3~4?



※碑文解読後、ヱリカは鍵の仕掛けに向かって「”あなたたち”の不運は私をこの島に迎えたこと」と語りかける。


複数の鍵を擬人化している、

クラウス夫妻を思い描いている、

金蔵とベアトリーチェを指している

等の可能性も考えられるが、次のEP6アヴァンで人事不詳バトラにベルンカステルが”あんたたち”と複数形で呼びかけるのと同じとすると…?



※ゲーム盤のルールを理解したメタバトラは「黄金の魔女」を継承するが、バトラも金蔵も、魔女(witch)の男性形である魔人やwizardではなく、無限の魔術師(sorcerer)を名乗っている。


ウィッチは生まれつきの存在だが、ソーサラーはあくまで魔術を学んで後天的に身に着けた人間を指す。

彼らは魔女を愛し魔法を理解し連れ添う道を選ぶが、本物の「witch」ではなく、あくまでニンゲンという事か。


※ロノウェとベアトの三国志談義。


完全な余談ではなく、「ヤスのルーレットの結果」の暗示なのでは。


三つの国が争い、最後は別の国に統一されて三国は滅んだ。

→ベアト・シャノン・カノンの三つの人格が争い、最後は別の人格(幾子)に統一されて黄金郷は滅んだ。



※バトラに「 性格が悪い」と言われたヱリカが「謎解きが好きという時点でそれを推理できなかったのか?」と返す場面がある。


これは嫌ミス作家であるリアル右代宮戦人の、ヱリカに仮託した自己言及なのであろう…。

次のEP6幻想内での「対として登場したキャラクターの自己言及は、実は当人ではなくパートナーの事情を語っている」 の先駆けか。

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